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When It’s Too Late For P.F. Flyers( apple musicにないためYouTubeリンク)
映画が大好きである自分はこれまで無数の映画を観てきた。そして、スポーツビジネスに身を置くものとしてもスポーツに関わる映画もたくさん観てきた。そんな私が思う最強のスポーツ映画について紹介したい。
それは、1993年公開の野球映画「The Sandlot」(原題:サンドロット/僕らがいた夏)だ。
The Sandlotさんの投稿 2012年5月7日月曜日
Sandlotは平たく言えばいわゆるキッズ映画だ。1990年生まれの私も最初に観たのはアメリカに住んでいた4-5才の頃だったと記憶している。
簡単にあらすじを紹介する。
舞台は1962年の夏、アメリカ・ロサンゼルス郊外の田舎町。母が再婚したばかりの義父の仕事の都合で町に引っ越してきた主人公スコッティ少年は、引っ込み思案でなかなか友達ができないでいた。ある日、近所の同年代の少年たちが毎日のように集まって野球をする空き地(Sandlot)に、おもちゃのグローブを片手に勇気を振り絞って行ってみるが…
スポーツビジネスに携わる者としては、「スポーツビジネスの実態を正確に描写している」であったり、「スポーツの持つ、人々に勇気と感動を与える素晴らしい力をよく表現できている」であったりといった“映画としてのクオリティ”の高い映画を本来紹介するべきなのだろう。
しかし、あえてこのSandlotが最強のスポーツ映画であると声を大にして言いたい。
それはSho Kume少年に次の2つの大切なことを教えてくれたからである。
① PF Flyersよりかっこいいシューズは存在しない
PF Flyers: Guaranteed to make a kid run faster and jump higher.
The Sandlotさんの投稿 2012年8月21日火曜日
私はこれまで、この映画に出てくる「PF Flyers」よりもかっこいいと思うシューズに出会ったことがない。そしてこれからも恐らく出会えないだろう。
② カリスマに求められるメンタリティ
Happy Birthday Mike Vitar. Hope it’s a home run!
The Sandlotさんの投稿 2015年12月21日月曜日
人々が魅せられるカリスマが背負う責任や運命を、幼いカリスマBennyを通してこの映画は教えてくれる。
良い映画の条件は、観る人の”心を動かす”映画であることだと思っている。
その意味で私にとってはこのSandlotこそが、最強のスポーツ映画である。
映画評論的なところはプロにお任せするとして、Sandlotの最強なところについて書き殴っていきたい。
【!ネタバレ注意!】
ここより先は多分にネタバレを含むので、気にされる方は映画を観てからどうぞ
Contents
■ベースボールのノスタルジー描写がエモい
What’s harder: catching a Leprechaun or pickling The Beast? Happy Saint Patrick’s Day.
The Sandlotさんの投稿 2015年3月17日火曜日
舞台が1960年代のアメリカということもあり、アメリカ人にとってのベースボールというスポーツの“ノスタルジー“が余すところなく描写されているのがグッとくる。
野球は、今でこそアメリカではアメフトやバスケに人気で抜かれてしまっているが、1960年代までは「アメリカといえばベースボール」と言われるほど国民的スポーツであった。今でも特に年齢の高い層・白人層の間ではその傾向がまだ根強い。
野球はそんな”古き良きアメリカ“を感じさせてくれるスポーツとしての”ノスタルジー”がひときわ強い。
Sandlot内でも物語の肝となっているのは、キッズたちが全員ベーブ・ルースを崇拝していることだ。
自分の命よりもベーブ・ルースのサインボールに重きを置いており、サインボールをなくしてしまったスコッティは、“That ball is worth more than your whole life”(あのボールはお前の全人生よりも価値がある)と言われてしまうほどだ。
また、その時代(あるいは現代でも)の大勢の野球少年たちがそうであるように、映画内のキッズたちは、誰から強制されるわけでもないのに、取り憑かれたかのように毎日Sandlotに集まり野球をするという描写が良い。
打算的に考えれば合理性がない(別にみんなプロになりたいからではない)にもかかわらず、それでも何かに熱中することの絶対的正義・尊さを思い出させてくれる。
そして極めつけは、7月4日(アメリカ建国記念日)に開催される1年に1回のナイトゲームだ。
アメリカでは7月4日は毎年各地で盛大な花火が打ち上げられる。その花火の明かりが照明になることで、その日だけナイトゲームが可能になるとか、なんて素敵なんですか。
Did you spend your summers like The Sandlot kids? Check us out on Twitter! http://bit.ly/SandlotMovieTwitter
The Sandlotさんの投稿 2013年4月26日金曜日
7月4日にアメリカの特に郊外では必ず目にする近所のバーベキューを横目にSandlotへ走り抜け、花火の明かりの下、レイ・チャールズの名曲「America The Beautiful」をバックに野球をするキッズたちの画が最強にエモい。
そして、皆が花火の美しさに見とれている中、Benny少年だけは花火に目もくれず、ベースを回りつづける対比も最高。
■とにかくBennyがかっこいい
Sandlotの主人公は語り手でもあるスコッティということになっているが、本当の主人公は間違いなくBennyである。
Sandlotに集まる野球少年たちがこぞって、野球が初心者で下手くそなスコッティを馬鹿にして相手にしてくれない中、リーダーBenny兄貴だけが真っ先にスコッティを仲間として受け入れる。
その後も、スコッティのダサい帽子を「暖炉で焼いて捨てろ」と言い自分の野球帽をあげたり、おもちゃのグローブが壊れて野球ができないと落ち込むスコッティに自分のお古のグローブをあげたりと、なんて良い奴。
極めつけは、外野フライが取れないスコッティに「グローブを高く持って突っ立っていれば大丈夫」と言い、正確無比なノックでグローブにボールを飛ばすシーンでは惚れずにはいられない。
野球が大好きなキッズたちの中でも、群を抜いて野球が上手く、野球が好きなBenny。
暑すぎて他のキッズたちが「野球をしたくない」と言う日も、一人だけ野球をやりたがるBenny。
Bennyのあまりにも強烈なバットスイングでボールを破壊してしまった際、他のキッズが「こんなの初めて見た」と感動する中、一人だけボールが壊れたことで野球がもうできないことを悲しむBenny。
上述の7月4日のナイトゲームのシーンでも、“For us baseball was a game, but for Benny, baseball was life” (僕たちにとって野球はただの“ゲーム“だったが、Bennyにとって野球は“人生“だった)というナレーションもグッとくる。
そして本題の“カリスマ“についてである。
スコッティがなくしてしまったボールを皆で奮闘しながら取り返そうとするもうまくいかない中、最後はBennyが一人でやってのけてしまう。
他人事なのに、夢にまで出てくるほど”自分ごと化”してしまうBenny。 当のスコッティが「危険だからもうやらなくてもいい」と言われても、“Yeah, I do, Smalls. I have to do this.”(いいや、俺はやらなくちゃいけないんだ)と背負い込んでしまう漢気がかっこいい。
夢に出てきたベーブ・ルースが「柵を乗り越えてボールを取ってこればいいだけじゃん」と言い放つシーンは、「大人から見ればこのキッズたちが大げさに騒いでいる事態が大したことではない」という描写ではない。
Benny少年の視点からは、「憧れのカリスマ(ベーブ・ルース)から見れば凡人(自分たち)が大げさに騒いでいる事態が大したことではない」と言われているのだ。
そして、キッズたちのカリスマでいなければならない自分も、こんな程度のことはさらっと片付けられようでないといけないという使命感が芽生えるなんともアツいシーンだ。だからこそ、“I have to do this”なのだ。
参考:「頂点に立った者にしか見えない風景」
Remember kid, there’s heroes and there’s legends. Heroes get remembered but legends never die. Follow your heart kid, and you’ll never go wrong.
The Sandlotさんの投稿 2012年6月22日金曜日
■とにかくPF Flyersがかっこいい
そんなBennyが柵を飛び越えるために新調するのが伝説のシューズPF Flyers。
“The shoes guaranteed to make a kid run faster and jump higher”(キッズが、より速く走れ、より高く跳べることが保証されたシューズ)以上の説明は不要だ。
実際にPF Flyersを履いたことのある方ならわかると思うが、「より速く走れ、より高く跳べる」なんてことは全くない。しかし、そんなことは関係ない。PF Flyersこそが世界で最もかっこいいシューズなのだ。
PF Flyers are your secret weapon if you want to pickle The Beast. Did you pick up a pair after watching The Sandlot?
The Sandlotさんの投稿 2013年5月15日水曜日
■キッズの掛け合いが最高
This is how we do it. #LastDayOfSummer
The Sandlotさんの投稿 2017年9月21日木曜日
1990年代はキッズが主人公のスポーツ映画の全盛期の時代であった。このSandlot(野球。1993年)のほか、「The Mighty Ducks」(邦題:飛べないアヒル。アイスホッケー。1992年)シリーズ、「Little Giants」(邦題:リトル・ジャイアンツ。アメフト。1994年)、「The Big Green」(邦題:ビッグ・グリーン。サッカー。1995年)などたくさんの映画が作られた。
ただでさえ演技のうまい子役へのキャスティングが集中するところ、こうしたスポーツ映画ではスタント代役を使わず実際にスポーツができる子供が起用される背景もあり、同じ子役俳優が複数作品にわたって出演していることが多い。(例えば、BennyはMighty Ducksシリーズの2-3作目、キャッチャーHamは「The Big Green」にそれぞれ出演している)
そうして撮影に慣れている子役が多いということもあってか、Sandlotに出てくるキッズたちの掛け合いの間やデリバリーが絶妙で面白い。いつみても唐突な台詞・罵りあいに噴き出すことが多い。
一つだけ擁護できない点としては子供とはいえ女子を差別する発言があることだ。これだけはとても残念。
アメリカにおいて根強い人気を誇るこのSandlotは、2018年に公開25周年を記念した同窓会イベントが開かれ、大きくなったキッズたちの姿を拝むことができる。ここにはBennyの姿がないことも個人的にはツボである。
The Sandlot cast touched down in DC for some fun and games at All-Star Week 2018 and MLB’s Play Ball Park. Check out the…
The Sandlotさんの投稿 2018年7月14日土曜日
■まとめ
Sandlotは映画としての完成度は決して高いものとは言えないかもしれない。しかし、以上見てきたように、アメリカにおけるベースボールの哀愁を的確に捉え、Bennyを通して、カリスマとはどうあるべきかという重い無理難題な命題を映画を観たキッズたちに押し付け、そして、PF Flyersという最強にかっこいいアイテムを紹介してくれるという点において、まぎれもなく最強のスポーツ映画だと私は思う。
この記事を執筆するために、今一度Sandlotを見返した際の私の感想は一言、「ああ、やっぱりPF Flyers履いてないとダメだな」であった。すぐさまネットでPF Flyersを注文した。追跡サービスによると、明日には届くそうだ。届くのを待つこの今が一番楽しい。
Sho Kume 久米翔二郎
NYに本社を置くスポーツ&エンタメの経営/戦略コンサルティングファームTrans Insight のCHO (Chief Hustle Officer)
1990年愛知県名古屋市生まれ。音楽専門学校MESAR HAUSエレキギター科/東京大学法学部卒、
戦略コンサルティングファームP&E Directionsの北米オフィス代表(NY)を経て、現職。
音楽/映画/格闘技/X Sports/スタンドアップコメディ/NY/Hustle をこよなく愛するサイコパス。