SDGs, スポーツ

【戦略コンセプト#2】北大5大メジャースポーツに学ぶ、企業SDGs戦略の「4P&S」【スポーツ】

♬Playlist of this Article *本記事は、2022年に某メディアにて掲載予定であったものの、権利関係にてお蔵入りしたものです。週刊SDGsの連載をきっかけに有難いことに多数お問い合わせをいただいている上で、感じていること、参考になると感じていることをまとめたものである。 「戦略コンセプト」シリーズについて私が新卒で戦略コンサルティング業界への就職を選んだ大きな理由の一つが、創業者ブルース・ヘンダーソン氏を中心としたBCGの「PPM」や「エクスペリエンス・カーブ」「タイムベース競争」といった広くビジネス界の構造や急所をとらえた画期的なフレームワーク・コンセプトの開発や、マッキンゼー大前研一氏がコンサル歴わずか3年の32歳の頃に、巷にあふれるいわゆるテクニック本ではない、今ではすっかりビジネスの定番書となった「企業参謀」の執筆に代表される、業界としてのリーダーシップ性/イノベーティブ性に惹かれたからである。 コンサル業界に入った後は、ひたすら目の前にあるプロジェクトに向かうことに傾倒してきたが、未熟ながらもそろそろ「創っていく」「提唱」していく側の活動もしていきたいというのが趣旨である。不完全/粗削りな「コンセプト」となっていることも多分にあるが、随時リライトしながらブラッシュアップしていこうと思っている。 そんな当シリーズの第2回目は、当サイトでも連載している「SDGs」について。*本記事は、2022年に某メディアにて掲載予定であったものの、権利関係にてお蔵入りしたものです。週刊SDGsの連載をきっかけに有難いことに多数お問い合わせをいただいている上で、感じていること、参考になると感じていることをまとめたものである。 「SDGsと騒いでいるのは日本だけで、2030年までのBuzzワードでしかない」 こうした話を耳にしたことがある方も多いだろう。 これは確かに「半分正しい」一方で、残り半分については「全くの的外れな意見」であると断言できる。「半分正しい」というのは、米国をはじめ欧米諸国でとりわけ「SDGs」を掲げている企業や組織は確かに稀だからである。それは、国連が2015年に標榜する以前から、環境や貧困や権利といった社会問題に対して、「コミュニティ」や「ソーシャルジャスティス」といった名称の下すでに長い間取り組まれており、ことさら「SDGs」と名乗る必要性が薄いから、という単純な理由からだ。逆に169項目もあるSDGsに屋号変えすることで、目的や取組内容が希薄化してしまう恐れもある。SDGsを軽視しているという意味ではない。こうした背景もあり、以下で紹介するスポーツ界における取組みでも「SDGs」と銘打った施策は一つもない。 「全くの的外れな意見」というのは、少し考えてみれば納得がいくはずだ。 ご存じの通りSDGsは、2015年の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である。「2030年までのBuzzワード」という前述のコメントもここからきている。 まず、SDGsもそうであった(2000年に国連が標榜したMDGs(ミレニアム開発目標)に代わる次の標語となった)ように、2030年になったとしても、また次の標語に受け継がれていく可能性が高い。また考えにくいが、万が一2030年に国連が「169項目の目標をすべて達成できました」とSDGsを取り下げたとしても、その根本的な思想は今後も世界中において骨太な潮流として生き残っていくのは目に見えている。 SDGsはどう考えても2030年で終わることはない。なぜなら、世界はそんな簡単には変わらないから。 それならば、企業のSDGs戦略についても、「とりあえずバッジをつけてみただけ」「CSR活動をSDGs活動に名前を変えただけ」「最近はSDGsよりもサステナブルだからそっちでいこう」といったことではない、本質的な議論をしようではないかというのが今回の趣旨だ。 誰もがとっつきやすい「スポーツ」における米国のSDGs施策を題材に、企業のSDGs戦略を考えるのに有用な「4P&S」(Product, Price, Place, Promotion, & Sustainability)というフレームワークを提唱している。 Contents ■Product:製品 – NHLのヘルメットスポンサーロゴ 「4P&S」の最初の「P」はProduct(製品)だ。ここではNHL(アイスホッケー)チームのヘルメットスポンサーロゴの事例を題材に紹介したい。それは、ニュージャージー・デビルズが推進する「Buy Black」(黒人経営ビジネスから買って応援しよう)プログラムの一環として行われているアクティベーションだ。 NHLは選手が着用するヘルメットに各チームがスポンサーロゴを入れることを許可している。デビルズのヘルメットには、従来スポンサー契約を結ぶPrudential社のロゴがヘルメット側頭部に入るのだが、2021シーズンは30試合(シーズンは全82試合)において、当社はその枠を地元ニュージャージーの黒人経営企業(ミュージシャンのためのコラボレーションプラットフォームを提供するRAZU社)に無償で譲り、昨年12月からその黒人経営企業のロゴが入ることとなった。説明するまでもないが、本来高いスポンサー料を払わなければテレビ中継もされる北米4大スポーツのNHLのチームのヘルメットに企業ロゴの露出ができないところ、そうした出費が難しい地元黒人経営企業の広告宣伝費をPrudential社が肩代わりしているという構図だ。 一見なんてことない取組みに見えるかもしれないが、当施策はSDGsの本質を突いている。それは、「取り組む問題に対して、真に価値のあるProductを提供する」ということである。 歴史根深い米国の黒人地位向上の問題は、2020年の警察官によるジョージ・フロイド氏殺害事件を契機に加速したBLM運動において盛り上がりを見せ、大企業はこぞって「BLMをサポートする」と公式に表明し、各社様々な黒人関連支援団体への寄付を公約するようになった。 仕事柄、シリコンバレーの起業家とも接する機会の多い筆者は、ある一人の黒人起業家の発言が印象に残っている。ビジネスの世界においても高まるこうしたBLM支持・支援の風潮に対して彼は、「サポートしてくれるのはありがたいが、サポート側の自己満足にすぎない場合が多く、厳しい言い方をすれば、ありがた迷惑なんだよね。つまり、『お金』と『ポスト』をくれないと意味がない。」と極めて冷ややかな心情を吐露していた。 その意味において、デビルズとPrudential社の当施策は、黒人経営企業の真のニーズに応えているものであると言える。身をつまされる思いの方も多いかもしれない、企業側の「自己満足」に終わらぬよう、取り組むSDGs上のターゲット課題にとって「真に価値のあるProduct」とは何かを思考した上で提供する必要があるのだ。 ■Price:価格 – MLBのストリーミングサービス 二つ目の「P」、Price(価格)については、MLB(野球)のストリーミングサービスについてみていく。 MLBは、有料ストリーミングサービス「MLB.TV」を提供している。MLB.TVでは、MLBのアウターマーケット(視聴者の地元以外で開催される)の全試合をストリーミングすることが可能だ。シーズン試合だけでなく、ハイライトやオリジナル番組、オープン戦試合など様々なコンテンツが用意されている。値段は、オールアクセスのプランが年間$129.99、または月$24.99の月額プラン、好きなチームの試合だけが観られる少しお得なプランが年間$109.99といったラインナップとなっている。 面白いのは、毎年8月になると、大学生向けのMLB.TV無料プランが発表される点だ。4月~10月で実施されるシーズンの後半2-3か月(しかもプレーオフ進出などが決まる重要な2-3カ月!)が、本来月額$24.99のところ、大学生なら無料で観られるのだ。アメリカの学校の新学期が始まる9月の時期に合わせて「Back to College」と銘打って実施される当キャンペーンは、スポーツ飲料のGatorade社やトレーディングカードのTopps社(2022年1月にFanatics社が買収)によってスポンサードされている。 現役大学生の方は、MLB.TVの当キャンペーンのサービスの有難みを感じることは容易だろう。そうでない方は、ご自身の大学生時代を思い返してほしい。バブル期に大学生活を送った方以外は、「大学生」という時期は人生の中で実は最もお金が必要な時期ではなかっただろうか? 生活費は気にすることなく、何か出費があれば親にお小遣いをもらえばよかった高校生までとは違い、ある程度自分の生活のやりくりを自分の財布でしなければならなくなった大学生にとっては、野球が好きで観たいと思っても、そんな高額を払ってまで観るほどは余裕がない。そこをうまく付いた施策と言える。 もう少し客観的なアプローチで見てみよう。 Sports Business Journal誌によると、ファンの高齢化が進むMLBのTV視聴者の平均年齢は57歳である。57歳のファンにとっての月額25$と、20歳の大学生ファンにとっての月額25$とはわけが違う。20歳の$25(約2,875円。1ドル=115円換算)を37年後(57歳)の将来価値に換算すると、実に$43(約4,945円)(=25× (1+0.015)³⁷。米国10年国債利回り1.5%を金利として採用)となる。 あなたは野球のストリーミングサービスに月額5,000円払えますか? MLBは大学生をこの実質月額5,000円分の出費から解放してくれているのだ。別にこのようなややこしい計算をしなくとも、単純に収入の違いを想像すれば、その金額に対して感じる重みの違いが分かるだろう。 このキャンペーンは、ファンエンゲージメントのライフサイクルの観点から見ても面白い。 ファンの高齢化に悩むMLBは野球キッズに対する施策を数多く打ちながら、クラブラウンジやスイートボックス等いわゆるプレミアムシートで「MLBにお金を落としてくれる」大人ファンを大きな収益源としている。 こうしたキッズと大人ファンの間に位置付けられるのが大学生である。生活費は気にすることなく、何か出費があれば親にお小遣いをもらえばよかった高校生までとは違い、ある程度自分の生活のやりくりを自分の財布でしなければならなくなった大学生にとっては、野球が好きで観たいと思っても、そんな高額を払ってまで観るほどは余裕がない。そこをうまく付いた施策と言える。 こうして、ファンのライフサイクルの中のステージごとに適した施策を打つことで、「サステナブルなエンゲージメント」をMLBは行っているのだ。 実はこうしたお金のない大学生をターゲットとしたプライシングは、もっと身近な例でも学ぶことができる。その一例として、タイムズカー社をはじめとするカーシェアリング企業が大学生のうちに登録すれば4年間基本料金無料でサービスを提供していることが挙げられる。詳しくは立ち入らないが、よく見受けられるいわゆる単発の学割との違いを、「サステナブルなエンゲージメント」の観点から考えてみると理解しやすい。 ■Place:流通 …

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アカデミー賞, クリス・ロック, ウィル・スミス

アカデミー賞ビンタ事件における日米議論で圧倒的に欠けている視点

♬Playlist of this Article 3月27日に行われたアカデミー賞授賞式において、ウィル・スミスがクリス・ロックをビンタした事件だが、アメリカでは連日新しい情報が出てきて2週間近く経った現在でも話題は尽きない。 この騒動についての日米の反応の違いが面白く、様々考えさせられることが多いのだが、本記事では日本における反応について、圧倒的に欠けている視点をご紹介したい。 ※注:かなり偏った立場からの独断と偏見とバイアスと憶測に満ちた意見ですので、話半分で読んでください。 Contents ■日米の反応の違い<総論> 前提としての日米の反応の差は、下記記事などにとても分かりやすくまとめられているので、全体像の把握はそちらで確認してもらいたい。 町山智浩さん、3/29 TBSラジオ「たまむすび」出演回(書き起こし)町山智浩さん、水道橋博士の水道橋博士の異常な対談YouTube出演回猿渡由紀さん、東洋経済「『ウィル・スミス平手打ち』擁護に見る日米の差」) ここでは「熱狂的なクリス・ロック信者」いう、特に日本の方にはあまり馴染みのない角度・立場から思うところを述べたい。 ■違和感 ご存じの通り、日本においてはウィル・スミス擁護の意見が多いのだが、いわゆるザイオンス効果(単純接触効果)によるところも少なからず大きいように思う。 つまり、ウィル・スミスは「インディペンデンスデイ」や「MIB」シリーズ等数々の大作映画である程度見知っているが、クリス・ロックについては、今回のアカデミー賞で初めて知った人が大半だろう。 無意識のうちに比較的見慣れたウィル・スミスの肩を持つようになるのは自然な構図なのだ。そんな無自覚のバイアスがかかった正義感を振りかざした暴力的なコメントが多いのは少し危険なように感じる。 そこでせめて、そうしたバイアスを少しでも健全に中和させる意味でも、反対のバイアスのたっぷりかかった私の意見も読んでもらった上で、再び好きに正義感を振りかざしてウィル・スミスを擁護したい方はそうしてもらえると幸いである。 ■極度のクリス・ロック信者として 私は、特に日本人としては珍しい熱狂的なクリス・ロックファンである。 どれほど好きかというと、2016年2月末、当時卒業を控えた日本の大学生であった時に、クリス・ロックが司会を務めるからという理由で、アカデミー賞授賞式の開催されたLAハリウッドを卒業旅行の行く先に決めたほどだ。(行ってみて分かったことだが、)特に当日は会場のDolby Theatreを中心に数ブロック区画が完全に封鎖されていて関係者以外立ち入れないにも関わらずだ。とにかく、久しぶりのアカデミー賞司会という彼のハレの舞台を祝い、一緒の空気を感じたかったのだ。 クリス・ロックをどういう狂った経緯で好きになったのか、どういう点が好きなのかなどについては、ここでは語りつくせないし本題からそれてしまうので深くは立ち入らないが、彼のスタンド・アップスペシャルをはじめ、出演(声・ナレーション含め)映画・ドラマをすべて鑑賞し、YouTubeやネット上で拾えるインタビューなどを全部チェックし、出演したpodcastも全部聴いている。 2022年に予定している2種類のツアーのNY公演はいずれも今回のアカデミー賞騒動の前からチケットを抑えて楽しみにしていた。 ちなみにウィル・スミスも、いわゆる主要出演作はすべて観ているし、なぜか自伝も読んだし、いつも3話ほどで挫折はしてしまったものの出世作「The Fresh Prince of Bel-Air」も何回か視聴を試みるほどには好きということは念のために付け加えておきたい。 ■本題:日本の反応で欠けている視点 そんな極度のクリス・ロック信者である立場の私から、中継を観ながら真っ先に感じ、その後の日本における議論で圧倒的に欠けていると感じているのが、「にわとり社会のいじめ」の構図だ。 詳しくは、以下の心理学カウンセラーの方による記事を参照してもらいたい。心理カウンセリング空「自分よりも弱い者をいじめる心理」 「クリス・ロックが、同じく授賞式に参加していたアクアマン(ジェイソン・モモア)やロック様(ドウェイン・ジョンソン)だったら、ウィル・スミスは絶対ビンタしていない」 これは、アメリカでの反応で多かった意見の一つである。要するに大柄で筋肉隆々の強そうな男だったらウィル・スミスは手を出していないという意味であるが、割と本質を突いているように思う。 ウィル・スミスは、身長188センチで鍛え抜かれた身体であるのに対し、クリス・ロックは178センチと高さはあるものの見た通り、誤解を恐れずに言うといわゆる「もやし」体形だ。(この体形も幼少期にいじめられた原因の一つ) 私が中継を観ながら真っ先に持ったのは、こうした体格的な部分に加え、「あ、陽キャが陰キャだから殴っている」という感想だった。 小柄で学年で唯一の黒人であったクリス・ロックが子供時代イジメに悩んでいたということはドラマ「Everybody Hates Chris」などで、少なくともジェイダ・ピンケット・スミスが脱毛症に悩んでいる事実よりも知られているし(すみません偏見です。どっちもさほど知られていないかな)、これまた誤解を恐れずに言うと、クリス・ロックを見ただけでいわゆる「陰キャ」だというのは一目瞭然だ。コメディアンだからと言って子供のころからクラスを笑わす人気者だったわけではなかった。クリス・ロックは6-7歳の頃、コメディライターになりたいと漠然とした夢を持ち、図書館で「ユーモアの歴史」なる辞書のような本を読みふけっていたという変わり者だ。 対するウィル・スミスは、学生時代からスポーツ万能・MIT奨学金を得るほどの秀才と文武両道かつその持ち前のチャーミングな性格から後にドラマのタイトルにもなった「プリンス」というあだ名がつくほどの「陽キャ」だと言える。これまた見れば一目瞭然だろう。 勿論ウィル・スミスも「陽キャ」として子供のころからずっと順風満帆な生活を送っていたわけではなく、自伝でも述べているように、母親への虐待を続ける父親が何よりも怖かった、そして逆らうことができなかった。また、最近でも、家族ぐるみでスポットライトを浴びる中で批判にさらされることも多く、さらにはジェイダとの関係についても度々ニュースになっていた。当たり前だが、スクリーン上で見せるかっこいい・チャーミングな笑顔の裏で心に抱えているものは計り知れない。 だ・か・ら、今回のビンタ騒動は、「より弱い者に自分の怒りのはけ口として暴力をふるっている」ように見えたので残念だった。 極端な話、身長163センチながら完全に「陽キャ」なケヴィン・ハートだったとしても、ウィル・スミスは手を挙げていないように思う(これまた勿論完全に憶測)。クリス・ロックならビンタしても何も仕返ししてこないだろうというのが透けて見えたような気がした。その証拠に、ウィル・スミスはビンタした後にすぐに振り返り背中を見せた無防備な状態で立ち去っているし、その表情に「ふん。どうだ」という勝ち誇った表情をしている。そして、主演男優賞受賞のスピーチでは、「アカデミー賞関係者、ノミネートされた仲間に謝罪したい」と、死んでもクリス・ロックには謝らないというなんとも器の小さい悔しさを感じ取った。 勿論一番悪いのは、そもそもの暴力・いじめをした者に決まっている。しかし、会社・学校・家庭などで暴力・いじめにあった者が、そのはけ口をさらに自分よりも弱い者に向けて同じように暴力・いじめをしてしまう。まさしくイジメがなくならない大きな要因の一つである負のスパイラルの構図ではなかろうか。 日本では報道されていないようだが、今回の騒動(ビンタ、スタンディングオベーションで迎えられたウィル・スミス)を見て、「子供の頃のいじめのトラウマが蘇った」とトリガーされてしまった人が著名人・一般人に関わらずとても多いことは言及しておきたい。 最後にもう一つ視点を提供したい。 ビンタの後の何食わぬ顔での進行対応のすばらしさでクリス・ロックは絶賛されているが、これは本当にその通りだと思う。 コメディアンであり総合格闘技団体UFCで実況を務め自身も柔術黒帯のジョー・ローガンは、「クリス・ロックがちょっとでも柔術をかじっていたら、ウィル・スミスが背中を見せた瞬間に後ろから組み付いて締め落としていた可能性だってある」と冗談交じりに語っている。 これは実はあながち間違っていない。クリス・ロックはSNL時代の仲間のpodcastに出演した際に、こう語っている。 「最近まで自分が怒ることに恐怖を感じていた。最近になってセラピーでようやく克服することができた。子供の頃、7人兄弟の長男にもかかわらず弟たちよりも体が小さい自分は、弟が『クリス、○○にいじめられたんだよ、助けてくれよ』と泣きつかれる度に悩まされていた。そんな複雑な感情が募る中、ある日パーティでイジメられ女の子の前で辱めを受けた際に、家に帰った後に袋にブリキを詰めてそいつをそれで殴り返して、倒れた後も頭を踏みつけて半殺しにしてしまったことがある。」 何も体格・筋肉・格闘技経験だけが身体的な「ヤバさ」(肯定しない意味でもあえて「強さ」とはしない)を決めるのではなく、こうした「頭のぶっ飛び」具合もいくらでもあるということを忘れてはならない。最近物騒な事件が多発する日本においても十分に共感してもらえるのではないか。 そうしたことを考えると、可能性は限りなくゼロに近いが、今回ウィル・スミスにビンタされた後、そこらへんのマイクスタンドや観客席のシャンパングラスを片手に後ろからウィル・スミスを襲って大惨事になっていたという全く別のシナリオがあったかもしれないと思うとゾッとしないだろうか。 ■おわりに 前述の通り、私はクリス・ロックもウィル・スミスもどっちも大好きだ。今回は情報の少ないクリス・ロックファンという立場の視点を提供する意味でも、かなり偏った意見をあえて提供できたならば幸いだ。 クリス・ロックにも文句はある(例えが古い、味の占めた安い笑いに頼ったな、そこ行くなら少しリサーチしとけ、そもそも彼氏の方に行け、そういうとこだぞ など)のだが、何よりも、今回のジョークが引き金になったものの、ウィル・スミスが何か抱えているのは誰の目からも明らかなので、周りの者はしっかりケアしてほしい。 繰り返すが、どっちも好きなので、公私ともに早く仲直りして、いつの日かクリス・ロック司会の「Comedy …

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【戦略コンセプト#1】頂点に立った者にしか見えない風景【スポーツ】

♬Playlist of this Article 「戦略コンセプト」シリーズについて私が新卒で戦略コンサルティング業界への就職を選んだ大きな理由の一つが、創業者ブルース・ヘンダーソン氏を中心としたBCGの「PPM」や「エクスペリエンス・カーブ」「タイムベース競争」といった広くビジネス界の構造や急所をとらえた画期的なフレームワーク・コンセプトの開発や、マッキンゼー大前研一氏がコンサル歴わずか3年の32歳の頃に、巷にあふれるいわゆるテクニック本ではない、今ではすっかりビジネスの定番書となった「企業参謀」の執筆に代表される、業界としてのリーダーシップ性/イノベーティブ性に惹かれたからである。 コンサル業界に入った後は、ひたすら目の前にあるプロジェクトに向かうことに傾倒してきたが、未熟ながらもそろそろ「創っていく」「提唱」していく側の活動もしていきたいというのが趣旨である。不完全/粗削りな「コンセプト」となっていることも多分にあるが、随時リライトしながらブラッシュアップしていこうと思っている。 そんな当シリーズの第1回目は、「頂点に立った者にしか見えない風景」について。 Contents ■「頂点に立った者にしか見えない風景」 今月13日、国枝慎吾選手が男子車いすテニスの部で9度目の「ITFワールドチャンピオン」を受賞した。2大会ぶり3度目の金メダルに輝いた東京パラリンピックに続き、USオープンでも2年連続8度目の優勝を果たすなど、当選手にとって今年も大活躍の年であったのは誰も疑いようのない事実だろう。 加えて、五輪前から標榜し、ラケットにもその言葉を貼り付けて臨んだという「俺は最強だ」との自身の言葉を再び証明し、有言実行のチャンピオンとして話題を呼んだことも記憶に新しい。 世界ランキング1位の絶対王者として君臨する国枝選手の「俺は最強」という言葉を耳にしたとき、真っ先にある映画の一節を思い浮かべた。 それは、『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017)という映画の中で、天海祐希演じるチアダンス部の顧問早乙女が主人公ひかり(広瀬すず)に言い放った次の言葉である。 “ 頂点に立った者にしか見えない風景がある” 少し補足すると映画では、主人公らチアダンス部が優勝を目指して練習を積み重ねてきた全米大会の決勝を目前に、顧問早乙女は、誰よりも頑張りチームを引っ張ってきたエースで部長の彩乃(中条あやみ)をセンターから外し、代わりに技術面で劣るひかりを抜擢。これまで懸命に努力してきた彩乃の努力を踏みにじる采配をとった早乙女に対して「先生を軽蔑します」と反抗。それに対して早乙女は「それでもいいわ。」という言葉に続いて、このように冷たく突き放すのだ。 ■UFCのスーパースター2人しか共有できなかった風景 私は、この「頂点に立ったものにしか見えない風景」という概念を度々想起する場面に出くわす。 最近では、今年7月に行われた米総合格闘技UFCのビッグマッチにおいての一場面だ。 それは、2021年にForbesが発表したアスリート長者番付ランキングでサッカーのリオネル・メッシ選手やクリスティアーノ・ロナウド選手を押さえて、推定年収約197億円で「世界一稼ぐアスリート」となったUFC一のスーパースターである男子元2階級王者コナー・マクレガー選手と、同じくUFCのスーパースターの女子元世界王者ロンダ・ラウジー氏のやり取りであった。 マクレガー選手は直近の試合で対戦して負けている相手へのリベンジマッチとして臨んだ試合だったが、試合開始早々に足首を骨折してしまいドクターストップでTKO負けを喫した。 足首の痛みから立てず座り込んだ体勢のままで受けた試合後のインタビューでは、「俺は負けてねぇ!」と叫び、相手選手、挙句の果てにはその妻にまで暴言を浴びせる悪行に及んだ。 これに対して、格闘技ファン、選手からは壮絶な批判を浴び、UFC代表のダナ・ホワイト氏も「相手の家族まで貶すのは好かない」と不快感をあらわにした。 (足首が折れて立ち上がることができず座ったまま、試合後のインタビューで相手選手に罵声を浴びせるマクレガー選手) そんな中、一人だけマクレガー選手を擁護したのがラウジー氏である。氏は自身のTwitterで以下のように投稿している。 ” 負けた瞬間からすぐ次のファイトをプロモートするあなたの姿勢に感嘆する。私にはとてもできないことだ。他の選手、UFC、メディアはあなたがいてくれてラッキーだ。” (マクレガー選手を称えるラウジー氏のツイート) 誤解を恐れずに言うと、UFCの人気を牽引してきたのはこのコナー・マクレガー選手とロンダ・ラウジー氏といっても過言ではない。両者とも世界王者となっている上に、UFC史上でも圧倒的人気を誇るスーパースターである。 世界一稼ぐアスリートであるマクレガー選手は、2013年のUFC参戦後、歯に布着せぬビッグマウスのトーク力とそれを支える試合での強さ・エキサイティングなファイトスタイルで一躍人気者に上り詰めた。 UFCの歴代PPV(ペイパービュー)イベントのトップ10をみると、10のうち実に8のイベントが大トリをマクレガー選手が務めたものであり、いかにUFCのドル箱スターであるかが窺える。 マクレガー選手が登場する前のUFCのスーパースターが誰であったかというと、それこそがラウジー氏である。 元々UFCは男子の試合しか実施されておらず、ホワイト代表も「UFCで女子の試合を組むことは未来永劫ない」と公言していた。そんな男子MMA至上主義のホワイト代表であったが、ラウジー氏のカリスマ性にほれ込み、自身の発言を覆す形で初代女子バンタム級チャンピオンとして迎えた。その後、階級を3つ増やし今ではPPVの大トリを務めるほどの人気コンテンツとなったUFC女子部門の現在の盛況ぶりはこうしたラウジー氏の貢献によるところが大きい。 (国外大会で熱烈なファンに迎えられるラウジー氏。見てわかる通り若い女性のファンが多いのも特徴) (ラウジー氏の人気は競技に留まらず、『ワイルストスピード』『エクスペンダブルズ』シリーズなどハリウッド大作映画にも出演) そんなUFCの人気を一手に請け負い、広告塔としてのプロ―モーターからの期待、格闘技ファンからの応援/非難を背負いながらチャンピオンとしてしっかり勝ち続けるプレッシャーの下戦ってきたマクレガー選手とラウジー氏の両名の今回のやり取りを通して、「頂点に立ったものにしか見えない風景」を感じることができる。 実力・人気ともに頂点に立った2人にしか分からない風景vsそれ以外の世界。 ある意味選民思想的で、凡人には排他的かつ残酷でありながら、とてもロマンに溢れる構図ではないか。 諸事情により深くは立ち入らないが、最近でぱっと思いつくところで、以下のような場面もこの構図を感じることができると思うので、こういう視点からもう一度見てみるのも面白いと思う。(※このリストは随時追加していくので、気になる方は時間が経ってから気が向いた時にチェックしてみてください!) 北京柔道金で総合格闘家の石井慧選手「本気で競技やったことないんだろうな」(石井慧選手の公式Twitter) ボクシング村田諒太選手「金メダリストに順位づけするなど、失礼極まりないな」(村田諒太選手の公式Facebook) AKB48前田敦子「私のことは嫌いでも、AKB48のことは嫌いにならないでください」(スポニチ) 五輪平泳ぎ2冠2連覇の北島康介氏「まあ、相手がいないことかな。」(マクドナルド CM) 格闘技ファン待望の世紀のキックボクシングマッチ「天心vs武尊」(Yahoo!ニュース) 映画「Sandlot」の野球少年グループの番長Benny「いいや、俺はやらなくちゃいけないんだ」(NY Hustle Records) この風景は、何もスポーツ界に限った話ではなく、何かで頂点を獲ったことのある者であれば、大小はあれど、見ることのできるものであると思っている。 例えばビジネス界においては、経営者であったり、何かの責任者・部門長であったりでもよい。それ以外でも、何かのコンクールで優勝したり、学校の生徒会長に選ばれたり、なんなら、部活のキャプテンや学級委員に選ばれたりといったことでもよい。 こうした経験がある方は思い返してみてほしい。そうとは認識せずとも、”あの時” 他の人には見えない風景を見たのではないだろうか? ■本当に「頂点に立ったものにしか見えない」風景なのか? この「頂点に立ったものにしか見えない風景」は果たしてアスリートをはじめ頂点に立ったことのある者にしか見えないものなのだろうか? 私が幼いころに観た映画『D2 マイティ・ダック/飛べないアヒル2』(1994)のエンドロールで主人公のキッズホッケーチームのメンバーたちが世界大会で優勝した後、キャンプファイヤーを囲みながら、お世辞にも上手とは言えない歌声で、英人気ロックバンドQueenの名曲『We …

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【週刊 米国スポーツ&エンタメ最新SDGs事例 #4】NHLデビルズ×Prudential社のヘルメットロゴにみるSDGs差別化施策

♬Playlist of this Article 【当シリーズについて】近年話題のSDGs。対応に追われた企業では、「バッジをつけるだけ」「ホームページ上で既存取組の名前を『CSR』から『SDGs』に変えるだけ」の”なんちゃってSDGs”が横行しています。2030年を過ぎてもSDGsブームは終わりません。なぜならそんな簡単に世界は変わらないから。名前は変わってもこの時代の潮流は変わりません。それならば、本質的なSDGs策を考えませんか?とっつきやすいスポーツ&エンタメ界のアメリカ最新SDGs事例を通して、SDGsのエッセンスを一緒に学んでいきましょう。 Contents ■NHLニュージャージー・デビルズ×Prudential社の「Buy Black」プログラム 2020年5月25日に、ジョージ・フロイド氏が8分46秒間もの間、警察官に頸部を膝で押さえつけられ殺害された事件により、全米においてBLM運動がより一層強まったことは多くの方がご存じのところであろう。 スポーツ&エンタメ界においても、兼ねてから各々の組織や個人が掲げる「ソーシャルジャスティス」の文脈において、こうしたBLM運動の支援や人種間格差是正に向けた取り組みが活発化している。 挙げようとするとキリがないが、NFLの場合では、フロイド氏と同様に警察官の不当な暴力によって命を落とした黒人被害者の名前などを選手がヘルメットの後ろにプリントして試合をプレーすることを許可した2020シーズンに続き、2021シーズンもヘルメット裏に「Black Lives Matter」「End Racism」「It Takes All of Us」「Stop Hate」「Inspire Change」「Say Their Stories」の6つのメッセージのいずれかを入れることが認められている。また、フィールド上のエンドゾーンに「It Takes All of Us」「End Racism」のメッセージが入っている。そして、レギュラーシーズンの終盤のWeek 17-18においては、各チームのソーシャルジャスティスの取り組みを大々的に紹介することになっている。 同じヘルメットに関する施策で、NHLのニュージャージー・デビルズとPrudential Financial社が実施しているものがある。 従来スポンサー契約を結ぶPrudential社のロゴがヘルメット側頭部に入るのだが、30試合(シーズンは全82試合)において、当社はその枠を地元ニュージャージーの黒人経営企業に無償で譲り、その黒人経営企業のロゴが入る。(12/8の試合より、ミュージシャンのためのコラボレーションプラットフォームを提供する「RAZU」のロゴが入ったヘルメットが着用されることになっている) 説明するまでもないが、本来高いスポンサー料を払わなければテレビ中継もされる北米4大スポーツのNHLのチームのヘルメットに企業ロゴの露出ができないところ、そうした出費が難しい地元黒人経営企業の広告宣伝費をPrudential社が肩代わりしているという構図だ。 デビルズが推進する「Buy Black」プログラムの一環として行われている当アクティベーションは、一見すると同じヘルメットに文字やロゴを入れるという点で、前述のNFLの取組みと似たようなものに見えるかもしれないが、その性質は全く違うものだ。 ■シリコンバレーの黒人スタートアップ経営者に聞く、ビジネス界のBLM支援の評価 前職の戦略コンサルティングファームにおいて、日米の企業の相互海外進出やスタートアップ投資の支援をしていた関係上、ベイエリア(サンフランシスコ&シリコンバレー)の起業家と接する機会が多かったが、特に一人の黒人スタートアップ経営者の発言が強く印象に残っている。 ビジネスの世界においても高まるBLM支持・支援の風潮に対して彼は、「サポートしてくれるのはありがたいが、本当に大事な部分でのサポートじゃないと、サポート側の自己満足にすぎなく厳しい言い方をすれば、ありがた迷惑なんだよね。つまり、『お金』と『ポスト』をくれないと意味がない。」と極めて冷ややかな心情を吐露していた。 思い返すと確かに冒頭の事件当時、大企業はこぞって「BLMをサポートする」と公式に表明し、各社様々な黒人関連支援団体への寄付を公約するようになったが、とりわけ当時者の彼にしてみれば、企業のこうした動きは、社会構造的な問題を根本的に変えるような動きではなく、モメンタム・インパクトとしては弱いのである。 「お金」の部分でいうと、2020年の全米におけるスタートアップへのVC投資額に占める黒人経営スタートアップへの投資額の割合は、わずか0.6%だった。 また、「ポスト」の方では、2020年にFortune500企業の全CEOに占める黒人CEOの割合はわずか1%であった。 いずれも、黒人がアメリカの人口の約15%を占めることから考えると極端に低い数字だということが分かる。 だからこそ「『お金』と『ポスト』をくれないと意味がない」のだ。 ここで一つ紹介したいのが、伝説的ヒップホップグループ「N.W.A.」の元メンバーで、俳優・映画監督の他、バスケ3on3のプロリーグ「Big3」の設立者であるなど起業家としての側面も持つアイス・キューブ氏の発言だ。 2020年の大統領選挙の直前に、当氏がトランプ前大統領を支持していると大々的に報道され(どちらの候補も支持しているわけではないということを自身は後に否定)、黒人をはじめ全米のリベラル派に当時衝撃が走った。 それもそのはず、かつて「F*ck the Police」と声高々に歌い、反体制ムーブメントの象徴でもあった当氏が、BLM抗議者のことを「暴徒」と呼び一貫して警察組織を擁護するトランプ氏を支持するというのは俄かには信じがたいことであった。 しかし、その中身を理解すると、以上述べてきた文脈において整合性がつくのだ。 概要は以下の通りである。 アイス・キューブ氏は、そもそもトランプ側(共和党)もバイデン側(民主党)のどちらも、マニフェストにおいて掲げる黒人支援施策では不十分である、との立場 自身が2020年8月に発行した、黒人の地位向上のための提言「Contracts of Black America」に対して、選挙を控えた両陣営は、人気者の当氏の影響力を味方につけるため、その意見を取り入れようとコンタクトを取り、それぞれ議論を交わした トランプ陣営が修正マニフェストを発表。その中に、アイス・キューブ氏の当提言の核となる主張である「黒人コミュニティに5000億ドルの資金注入」が入っていることをアピール …

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UFC268 生観戦 ゲイジーvsチャンドラー

現地観戦記UFC268@MSG in NY【268%楽しむための生観戦Tips5選】

♬Playlist of this Article 11/6(土)にNYのMadison Square Garden(MSG)で開催された総合格闘技イベントUFC268を妻と生観戦してきた。前々日・前日・当日と計3日間参加してきたのだが、どの日もとても熱く、また学びがたくさんあったのでご紹介したい。 自分なりの参戦Tipsを並べる形式としたので、今後UFCの大会を生観戦したいという方の参考になれば幸いである。 Contents ■初めに さて、今回のUFC生観戦は我々夫婦にとって、4月にフロリダ州ジャクソンビルで行われたUFC261以来、半年ぶりのものであった。 UFC261は、当時アメリカでまだどのスポーツイベントもフル観客100%キャパで復活していない時期に、15,000人規模のスポーツ施設として初めて観客動員制限なしで開催された記録に残る大会であった。そして、各試合内容も大いに盛り上がるものだった。(NYからフロリダまで飛行機で飛んで行って応援したホルヘ・マスヴィダル選手は盛大にKO負けを喫してしまったが、夫婦そろっての一番のお気に入りのローズ・ナマユナス選手が見事KO勝利でチャンピオンに返り咲いたので、まあ良かった。) 共和党(トランプ前大統領などの保守派)が強いフロリダ州で開催されたUFC261では、ワクチン接種の可否に関わらず観戦が可能で、なんとマスクの着用義務もない(一応、入場時にマスクが配布されたが、着用義務はなかった。フロリダという土地柄もあってか、ほぼ誰もつけていなかった)という、特に4月当時の感覚としては信じられないくらいのユルーい規制の中で開催された。 勿論、我々はワクチン接種を済ませ、せっかくだからと自前のマスクの上に配布されたUFCロゴ入りのマスクを装着しての2重マスク装備で臨んだのは言うまでもない。 ■Tips 1「前々日・前日・当日の3日セットで参戦すべし(都合がつけば)」 UFCのPPVイベントは基本的に、試合が行われる大会当日の他、前々日にメインカード選手を中心とした記者会見、前日に公式計量の後にファンの前で行われる公開計量と、計3日セットで同じ会場でファンが参加できる催しが設定されている。 他のメジャースポーツイベントと比べ高額なチケット代を払うからには、無料で入場できる他の2日間も是非参加したいところ。(今回私が購入したチケットは1次販売で最も安い席だったが、それでも1枚500ドル弱) UFC261は私にとって遠征であったため大会当日のみの参加だったが、今回3日間に参加してみて改めてそう感じた。 幸いにも会場のMSGはオフィスから徒歩10分程度にあったため、平日であったが、仕事の合間を縫って全日・前々日の夕方からのイベントに参加できた。 それぞれ簡単に振り返りたい。(※記者会見・公開計量ともに無料であるが、事前に予約が必要。私の場合はチケットを購入した際に登録されたMSGからメール案内があり、そこから予約) 【前々日:記者会見】 入場開始の1時間弱前に会場に着くと、すでにざっと100人程度のファンが行列を作っていた。 列で待っている間に、UFCが放映権契約を結んでいるESPNで働くお姉さんが「アンケートに協力してほしい」とやってきて、ストリーミングサービス「ESPN+」に関する30秒程度のwebアンケートに答えると、スマホの裏に貼れるカードケースをくれた。 その後、係員に身分証とワクチン接種証明を確認され、金属探知機でのセキュリティチェックや電子チケットのスキャンを経て、MSG内のイベントホール(Hulu Theater)の入口に誘導された。 入口で少し待たされた後、「用意ドン」の合図とともに一斉に皆ステージ近くの席に走っていく。久しぶりに室内でかけっこのようなことをしたのだが、狭い通路を我先にと皆先を急ぐので少し危険な状態。予想外の事態で妻が心配だったが、後で「久しぶりにあんなことして楽しかった」と言っていたので一安心。 記者席を除くと前から3列目中央の良い席を確保。関係者や数十~数百万円の高額チケットを買わない限り、3日間を通してファイター達を一番近くで見られる可能性が高いのがこの記者会見であるということが分かった。 主要3カード×2人の6人とUFC代表ダナ・ホワイト氏が登壇しての記者会見が始まると、目当てのナマユナス選手を中心に、向かっての赤コーナーサイドばっかり見ていた笑 メインを務める2選手のトラッシュトークが白熱して、ファンも大盛り上がり。大会1週間前に毎日更新される公式YouTubeのEmbeddedシリーズで観るのとはまた違った会場の雰囲気を感じる。やはり生の会場は歓声やヤジがはっきり聞こえて面白い。 記者会見が終わった後、会場に来ていた元ミドル級世界王者のマイケル・ビスピン氏が残ってファンとの写真撮影に快く応じていた。 ちょうど前日にツイートしていたこともあり、個人的に満足。 Congrats to the Champ’s huge display on Times Square last night. Personally, the best explanation of #NFT, forget by an athlete but from …

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【週刊 米国スポーツ&エンタメ最新SDGs事例 #3】Audi社の「全MLS株ドルコスト平均法」スポンサーシップ

♬Playlist of this Article 【当シリーズについて】近年話題のSDGs。対応に追われた企業では、「バッジをつけるだけ」「ホームページ上で既存取組の名前を『CSR』から『SDGs』に変えるだけ」の”なんちゃってSDGs”が横行しています。2030年を過ぎてもSDGsブームは終わりません。なぜならそんな簡単に世界は変わらないから。名前は変わってもこの時代の潮流は変わりません。それならば、本質的なSDGs策を考えませんか?とっつきやすいスポーツ&エンタメ界のアメリカ最新SDGs事例を通して、SDGsのエッセンスを一緒に学んでいきましょう。 Contents ■MLSとAudi社 1993年に誕生した新興プロスポーツリーグである米国メジャーリーグサッカー(MLS)は、いわゆる北米4大スポーツに属するメジャーリーグベースボール(MLB)のMLB.TVやNBAのNBA TV/NBA League Passといった有料ストリーミングサービスを持っていない。 その理由は、やはりそれらのスポーツリーグと比べてまだまだ不人気であり、そうしたシステムを作るコストを賄うだけのユーザー獲得を見込めないからというのが大きい。 スポーツ専門のケーブル局ESPNなどで試合は放送されているが、アメフト(NFLと大学)や野球がメインで、狙って観ようとしない限り、中々MLSの試合中継に出くわすことは少ない。私の住んでいるNYにもチームが2つあるが、地上波にいたっては、夕方のニュースのスポーツコーナーで取り上げられることはまずない。 そんなMLSだが、もちろんたくさんのスポンサーがついている。今回はその中でもAudi社の「Audi Goals Drive Progress」についてご紹介する。 Audi社は、2015年からMLSの公式自動車メーカーパートナーとなってから、年間のNo.1チームを決めるシーズンプレーオフトーナメント「MLS Cup」の冠スポンサーをはじめ、リーグの他にも10以上のチームのスポンサーとなっている他、D.C. ユナイテッド(ワシントン)の新スタジアムの命名権を取得し、2018年7月に「Audi Field」がオープンした。 ■ゴールの数だけサポート金額を増やす「Audi Goals Drive Progress」 「Audi Goals Drive Progress」は、Audi社がMLS各チームのユースアカデミーを支援するプログラムである。 全チームのレギュラーシーズンでゴールが決まる度に支援金額を$500追加していくというものだ。 さらに、オールスターゲームでは1ゴール$5,000、MLS Cupプレーオフでは$2,000、決勝戦MLS Cupでは$10,000といったように、特別な試合では金額が増えていき、年間最大100万ドルまで支援するとしている。さらに、得点王に輝いた選手の所属するチームのユースアカデミーには、$10,000の追加支援が実施される。 ユースアカデミーへの支援金は、教育、交通、ハウジングの3つの用途に使われる。 具体的には子供たちに、サッカーはもちろんその他の勉学サポート、試合や遠征時の費用、アカデミーの寮での生活支援などを通して、各チームのユースアカデミーの総合力強化や、本来サッカーの実力はあるが経済的に理由によりワンランク上に進めない子供たちの後押しを行っている。Audi社はユースアカデミーに対する支援に精力的で、この他に、Audi Centerというトレーニング施設を提供しているチームもある。 ユースアカデミーで励む子供たちのドキュシリーズも当社スポンサーの下、MLSの公式YouTubeやAudi社ウェブサイトで公開されている。 ■Audi社のマーケティングの妙 ゴールの数に応じた金額を支援するというのは何も特別新しいことではない。例えばメジャーリーグでは、ホームラン数や打率に応じた慈善団体への寄付などが度々実施されている。 当プログラムのポイントの一つは、支援先がMLSのユースアカデミーに向けられている点である。 つまり、リーグのトップスポンサーであるAudi社は、言ってみれば、自らの一事業の未来に投資していることになる。そして、その事業は毎年着実に成長している事業なのだ。 当プログラムの説明において、「年間最大100万ドルまで支援」と述べたが、これも一つのポイントである。 元々、決まった試合時間で開催される上、試合数が決まっているシーズンの総ゴール数など、予想以上に極端に大きい数字になるものではない。そこに更にしっかりCAP(上限)をかけているのだ。 「全」ユースアカデミーを通して「着実に成長している」リーグに「決まった期間で(シーズンに応じて調整しながら)一定少額」の投資をしていくAudi社の当プログラムは、まるで着実に成長を続ける全米インデックス株にドルコスト平均法で米国が投資しているような状態であると言える。 つまり、リスクを抑えたすごくカターい投資なのだ。 そしてさらにもう一つ、個人的に興味深い点を挙げたい。Audi社のプレスリリースでは、当プログラムの支援金が実際にどのように使われたかを例示している。 注目したいのは、やはり自動車メーカーということもあり、上記太字のように「教育・交通・住居」のうちの「交通」に属する移動手段の調達が目立つ点だ。 前述の総額百万ドルを仮に全チーム数の27で割ってみると、1チームあたり約$37,000ドルだ。確かに車を一台買うのにちょうど良い値段だ。 何が言いたいかというと、(上の計算で仮定した場合にということは協調しておきたいが、)実質「チームに1台Audi車を提供する」プログラムと捉えなおすことができなくもない。 そこに、「子供たちの教育・交通・住居の支援」といった大義名分(社会的ミッション)であったり、「ゴール数が増えた分だけサポートする」(上述のようにむしろ定額からの減点式なのだが)といったゲーム性であったりが加わることにより、注目されるアクティベーションになっている、というのは実に面白い。 さらに、2019年の当プログラム発表当初は(現在はもう実施されていない)、「ファンが各ゴールについて特定のハッシュタグをつけてツイートすると、シーズンを通して平均ツイート数が多いチームのユースアカデミーに追加で$50,000を支援する」というように、他のスポーツリーグと比べて年齢層が低いMLSのファンを意識したSNSでのファン参加型のエンゲージメント企画も実施していたことも付け加えておきたい。 以上ご紹介したAudi社のアクティベーションからの学びとして、企業がSDGsを掲げたスポンサーシップを実施するにあたり、別に「必要に迫られてSDGsやってます」感バリバリのCSR施策になる必要は全くないということだ。 当プログラムのように、自らの事業に資する形で、新興プロスポーツリーグでも、少額でも、リスクの少ないカタい形で、ミッションを掲げ、ファンエンゲージメント性の高い形で実施することが可能なのだ。 特に、今後SDGs関連のアクティベーションを企画する新興スポーツやスポンサー企業にとって、MLSでのAudi社の当プログラムは大変参考になる事例である。 【スライドは👉こちらから無料でダウンロードいただけます。是非ご活用ください。】 …

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SDGs MLB サブスク

【週刊 米国スポーツ&エンタメ最新SDGs事例 #2】 MLBストリーミングの大学生無料エンゲージメント

♬Playlist of this Article 【当シリーズについて】近年話題のSDGs。対応に追われた企業では、「バッジをつけるだけ」「ホームページ上で既存取組の名前を『CSR』から『SDGs』に変えるだけ」の”なんちゃってSDGs”が横行しています。2030年を過ぎてもSDGsブームは終わりません。なぜならそんな簡単に世界は変わらないから。名前は変わってもこの時代の潮流は変わりません。それならば、本質的なSDGs策を考えませんか?とっつきやすいスポーツ&エンタメ界のアメリカ最新SDGs事例を通して、SDGsのエッセンスを一緒に学んでいきましょう。 Contents ■MLBのストリーミングサービス「MLB.TV」 米メジャーリーグ(MLB)は、他のプロスポーツと同様に有料ストリーミングサービス「MLB.TV」を提供している。MLB.TVでは、MLBのアウターマーケット(視聴者の地元以外で開催される)の全試合をストリーミングすることが可能だ。 シーズン試合だけでなく、ハイライトやオリジナル番組、オープン戦試合など様々なコンテンツが用意されている。値段は、オールアクセスのプランが年間$129.99、または月$24.99の月額プラン、好きなチームの試合だけが観られる少しお得なプランが年間$109.99といったラインナップとなっている。 面白いのは、毎年8月になると、大学生向けのMLB.TV無料プランが発表される点だ。4月~10月で実施されるシーズンの後半2-3か月(しかもプレーオフ進出などが決まる重要な2-3カ月!)が、本来月額$24.99のところ、大学生なら無料で観られるのだ。 アメリカの学校の新学期が始まる9月の時期に合わせて「Back to College」と銘打って実施される当キャンペーンは、スポーツ飲料のGatorade社やトレーディングカードのTopps社(MLBのトレカは22年からはFanatics社)によってスポンサードされている。 College students, we have a special deal for you! FREE #MLBTV fueled by @Gatorade! Get your subscription now: https://t.co/jf6ICfL33i pic.twitter.com/AiCK0WEg7U — MLB.TV (@MLBTV) September 10, 2020 ■各社カーシェアリングの大学生優遇プラン このキャンペーンを初めて知った時、私はタイムズカー社のカーシェアリングの大学生向けプランを思い出さずにはいられなかった。 ご存じない方のために説明すると、当社のカーシェアリングサービスは月額880円の基本料金+利用時間に応じた利用料金がかかるのだが、大学生のうちに入会すると、4年間基本料金が無料となるのだ。入会後すぐに社会人になったとしても入会から4年間は基本料金がかからない。ざっと計算すると880円×12カ月×4年=42,240円がタダになる。 車を持たない都内の大学生にとっては、固定費ゼロでまさに「翼が授けてくれる」ようなサービスだ。タイムズカー社に限らず大手のカーシェアリングサービスは似たような大学生優遇プランを展開している。 残念ながら、私はこうしたサービスを社会人1年目の時に知り、なぜ数カ月早く知ることができなかったのかと猛烈に後悔した記憶が残っている。 現役大学生の方は、MLB.TVの当キャンペーンやタイムズカー社などのサービスの有難みを感じることは容易だろう。そうでない方は、ご自身の大学生時代を思い返してほしい。バブル期に大学生活を送った方以外は、「大学生」という時期は人生の中で実は最もお金が必要な時期ではなかっただろうか? 夢や希望にあふれ、豊富な時間がある中でやりたいこと/やらなければならないことが無限にある(そして実はその後の人生を大きく左右しかねないような自己投資も含む)一方で、自由に使えるお金がなけなしのアルバイト代くらいしかない、といった大学生が大半ではないだろうか。 私も自分の大学生時代を思い返すと、実家が特別貧乏ということではなかったが、とにかくお金が必要だった記憶しかない。 一番印象に残っているのは大学と並行して通った音楽学校の授業料を稼ぐために、夜間のコールセンターやホテルマンのアルバイトなどに明け暮れていたことだ。昼は大学と音楽学校に通い、夜から朝まで夜勤のアルバイトをして、また大学と音楽学校やバンド練習に繰り返す日々を送り、しまいにはアルバイト勤務中にぶっ倒れ救急車で運ばれる事態にまでなってしまった。 早いうちに自分の体力の限界を知ることができたという意味ではよかったかもしれないが、まあとにかく大学生時代はお金が必要であったし、圧倒的に足りなかった。 ■大学生にとっては実質5,000円/月の負担を解消 もう少し客観的なアプローチで見てみよう。 ファンの高齢化が進むMLBのTV視聴者の平均年齢は57歳である。57歳のファンにとってのMLB.TV月額$25は、20歳の大学生ファンのMLB.TV月額$25とはわけが違う。 20歳の$25(約2,848円)を37年後(57歳)の将来価値に換算すると、実に$43(約4,899円)(=25× (1+0.015)³⁷。米国10年国債利回り1.5%を金利として採用)となる。 あなたは野球のストリーミングサービスに月額5,000円払えますか? …

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SDGs Coldplay 音楽

【週刊 米国スポーツ&エンタメ最新SDGs事例 #1】Coldplay ネット・ゼロカーボンのワールドツアー22年実施へ

♬Playlist of this Article 【当シリーズについて】近年話題のSDGs。対応に追われた企業では、「バッジをつけるだけ」「ホームページ上で既存取組の名前を『CSR』から『SDGs』に変えるだけ」の”なんちゃってSDGs”が横行しています。2030年を過ぎてもSDGsブームは終わりません。なぜならそんな簡単に世界は変わらないから。名前は変わってもこの時代の潮流は変わりません。それならば、本質的なSDGs策を考えませんか?とっつきやすいスポーツ&エンタメ界のアメリカ最新SDGs事例を通して、SDGsのエッセンスを一緒に学んでいきましょう。 Contents ■Coldplay ネット・ゼロカーボンのワールドツアー22年実施へ 10/14(木) 世界的人気を誇る英ロックバンドColdplayが、15日の新アルバム「Music of Spheres」発売に合わせて、コスタリカ~アメリカ~ヨーロッパ各国を周るワールドツアー(2022年)を行うことを発表した。 2017年以来実に5年振りとなる本ワールドツアーの発表のニュースは音楽メディアのみならず、ビジネス・一般メディアをも賑やかしている。それは、本ツアーがCO2排出量正味ゼロを意味する「ネット・ゼロカーボン」のコンサートツアーとなるとしているからである。 Coldplayは前作アルバムが発売された2019年にもワールドツアーの実施を計画していたが、「十分に環境に配慮できるツアーができない」ことを理由に中止した過去がある。 それが2年越しに「自分たちが納得できる水準で環境に配備できるツアーを行う準備が整った」として、満を持してツアーの実施が発表されたわけである。 ■12項目のイニシアチブからなるツアーのサステイナブルプラン ワールドツアー実施の発表と同時に、同バンドは本ツアーを持続可能なものにするためのサステイナブルプランを公表した。 サステイナブルプランでは、3つのプリンシパル(①Reduce、②Reinvent、③Restore)に基づき、当バンドの前ツアー(2016-17年に実施)と比較してCO2排出量50%の削減すること、及び、ツアーで排出されるCO2を超える量のCO2削減(オフセット)を実現することを誓約している。また、実現のためのアクションを具体化する12のイニシアチブ(CO2削減、エネルギー、交通、ファン、マーチャンダイスといったカテゴリーからなる)を公開。 その中で、コンサート開催のためのエネルギーはすべて再生可能利用エネルギーで賄うとし、会場各所に設置するソーラーパネルやBMW社が提供する二次電池を活用する他、人の動く衝撃をもとに発電するキネティックフローリングを観客の足元に敷いての発電を行う。また、ファンが乗ってペダルを漕ぐことで発電可能な自転車を会場に設置する。 コンサート開催におけるCO2排出量の大半を占める会場まで会場からの観客の移動については、SAP社と共同開発した無料専用アプリを通じて会場でグッズ購入などに使用できる割引クーポンを発行して、より環境にやさしい交通手段の利用を呼び掛けるとしている。このアプリの追跡機能をもとに、各コンサートにおける移動にまつわるCO2排出量を算出し、削減目標の進捗管理も行う。 各コンサート会場となるスタジアム・アリーナなどの施設にはサステイナブルガイドラインを共有し、高い水準で環境に配慮した設備や会場づくりを要請するとのこと。 各会場では、来場者がソーラーパネルやキネティック発電を体験できる形のアクティベーションも用意する。 オフセットの面では、会場にクリーンTech企業Climeworks社のCO2回収装置を会場に設置し、環境保全・修復を目的としたさまざまなプロジェクトへの支援や、チケット販売枚数と同じ本数の植林を実施する。(前ツアーの観客動員数は540万人を動員。英BBCによると、英国全体の1年における植林本数が2000万本なので、その1/4以上に匹敵することになる) また、こうしたツアーの取り組みは今後も持続可能なものとするために、出来不出来に関わらず気候変動の専門家とともに効果測定を実施する。また、Live Nation社のサステイナビリティプラットフォームにおいて、アーティストアドバイザーとして、業界内に本ツアーでの学びや知見・ノウハウを共有することでスケーラブルな取り組みにしていくことを約束している。 ■10/22(金)Climate Pledge Arenaのこけら落としのグランド―オープニングアクトに抜擢 Climate Pledge Arenaは米シアトルに位置するアリーナで、2020年6月に、同市に本社を置くAmazonが命名権を獲得したアリーナである 通常、命名権を取得した企業は認知度向上や商品・サービスの販売促進のために会社名を冠した名称にするところ、Amazonは自身の推進する気候変動対策イニシアチブの誓約Climate Pledge(直訳:気候への誓約)にちなみ命名。Amazonは命名権の購入額を公表していないが、通常アリーナの命名権が3~4億ドルであることを考えれば、同社の気候変動対策への取り組みの熱量が感じることができる。 そんな同アリーナは、世界で初めてネット・ゼロカーボンの認証を受けているアリーナとして注目を集めている。長年KeyArenaの名称で親しまれていたアリーナの改修には実に11.5億ドルものお金がつぎ込まれた。日本におけるアリーナ建設費用の相場が1億ドル前後であることを考えるとそのスケールの大きさが分かる。もちろん米国のアリーナの建設費用としても大きな金額だ。 この度改修作業が完了し、アリーナは2021年10月に待望のオープンを迎える。そのこけら落としのグランドオープニングアクトとして発表されたのが、Coldplayだ。以上述べてきた背景を鑑みると、気候変動・観光保全に熱心に取り組む両者がこうして交わるのはある意味必然だといえよう。 Coldplayのワールドツアー日程にClimate Pledge Arenaは予定されていないが、4年振りのコンサートとなる今回は間違いなく同ツアーの試金石としての側面も併せ持っているといえるだろう。 本コンサートはAmazon MusicとPrime Videoにてライブ配信されるとのことなので、ご都合が許す方は是非! ■Coldplayのワールドツアーはイベント興行界のデファクトスタンダートとなれるか コロナ渦を挟み2年越しの準備期間を経て発表されたColdplayの本ワールドツアーに、とても大きなポテンシャルを感じる。 これまでも、環境に配備したコンサートやイベント自体は多数開催されてきたのは事実だ。しかし残念ながら、どれも単発や小規模なものばかりで、文字通り「サステイナブル」といえるものはほぼないと言っていいだろう。 その意味においても、Coldplayほどの世界的アーティストが長い年月をかけて温めてきた本ツアーの取り組みに期待せずにはいられない。ツアーのオフィシャルサイトを見ても、様々な企業や関係者を巻き込み持続可能な形を模索していることが見て取れる。 これほど影響力を持ったアーディストの取り組みが成功すれば、今後のコンサート及びそれ以外のすべてのイベント興行におけるデファクトスタンダードとなる可能性を秘めている。 そうなれば、イベント興行界及びその周りを囲む様々なステークホルダーの業界地図は一変することになる。それも、恐らく皆が想像するよりも遥か早いスピード感で。 【👉こちらから無料でダウンロードいただけます。是非ご活用ください。】 Sho Kume 久米翔二郎 NYに本社を置くスポーツ&エンタメの経営/戦略コンサルティングファームTrans Insight のCHO (Chief …

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Ridiculousness スケボー Rob Dyrdek

【Forbes寄稿スケボー記事】あとがき

※Forbes寄稿記事のあとがきです。先に本編をお読みください。 Forbes本編記事はこちら ♬Playlist of this Article Contents ■Rob Dyrdekとの出会い 私がロブ・ディアディック氏を初めて知ったのは、数年前、アメリカ出張の宿泊ホテルで深夜TVチャンネルを適当にまわしていたときであった。日中の仕事で疲れ翌朝も早い中、何か考えずに気楽に垂れ流しながら寝落ちできる番組がないかと探していた時にMTVチャンネルの「Ridiculousness」に当たった。その後も出張や旅行でアメリカに行く機会がある度に、深夜には決まってMTVでは「Ridiculousness」が放送されていた(それもそのはず、本編記事でも紹介しているように、MTVのほとんどが当番組なのだから)。当時は当番組を観ながら「MTVも変わっちまったな」程度にしか思っていなかった。 次に、ディアディック氏に接する機会があったのは、NetflixでSLSのドキュメンタリー映画「The Motivation」(2013)を観たときであった。ここで私は、以前から時折観て楽しんでいたSLSが「Ridiculousness」の司会者が創設したという事実を知った。 そして、東京五輪で最も楽しみにしていたスケートボード・ストリートを観初めたときに、「SLSと同じルールが使われているんだ」とぼんやり思い、気になって調べてみると、五輪種目正式決定後にSLSとIOC関連組織が業務提携を結んでいた事実を知り、ディアディック氏の過去についてザーッと遡って調べた。「トッププロでなかった選手がオリンピックのルールを決めてしまった」という氏のストーリーを新興スポーツリーグの観点から面白く思い、本記事を執筆するに至った次第である。 ■More than Meets the Eye ディアディック氏は一見すると「良い年をしてダボっとした服とキャップをかぶっているMTVらしいといえばらしい“大人こども”」に見えるが、時折信じられないほどに“座った目”を見せる。まるで、気の合う仲間とゲラゲラ笑いながらおバカ映像を楽しむ「Ridiculousness」のスタジオにいる自分を俯瞰して我に返っているように見えるときがあるのだ。本記事の執筆を通して、そんなディアディック氏の“目が座っている”理由が少しだけ理解できたような気がする。皆さんも海外にいる際や日本のケーブルテレビでMTV「Ridiculousness」を観る機会があった際は、是非彼の“座った目”に注目してほしい。 Ridiculousnessさんの投稿 2015年10月1日木曜日 上でも述べた、「点と点を線で結び、意味のあるストーリーを作っていく」工程を通して様々な企業や団体・個人をサポートできることは、コンサルタントという職業を生業にしていく選択をして良かったと思う大きな理由の一つだ。こうした執筆・出版に携わるごとに噛みしめている幸せでもある。 ■R.I.P. Dylan Rieder 最後に、私が世界一かっこいいという思うスケートボーダーを紹介したい。それは、2016年に白血病により惜しくも28歳の若さで亡くなってしまったディラン・リーダー選手である。彼のことを紹介している記事が多数あるので、詳しくはそれらをご参照いただきたいが、とにかくスタイリッシュでかっこいい滑りとライフスタイルを体現しているスケーターであった。高度なテクニックを要する技も決めるが、それよりも、モデルも務める彼の長い手足から繰り出される高さやダイナミックな技や、スケボーをするには機能面で適していない襟付きカッターシャツやスリッポン・ローファーで滑走する姿は他の追随を許さない独自のオーラを放っていた。 なぜ彼のことを紹介したかというと、SLSやディアディック氏に文句が一つあるとすれば、「ディラン・リーダーのスケボーを評価できるシステムを作ることができなかった」という点に尽きるからだ。(※あくまで個人の感想です) どんなスポーツでも言えることだが、「勝つ」喜びと「楽しむ」喜びとが入り混じっての魅力がある。だからこそプロから草の根まで多くの人に愛されているのだろう。競技としてまだ若いスケートボードが今後どのような進化をしていくのか、あるいはしていかないのか(リアルストリートのライフスタイルを体現する道を突き進むなど)非常に楽しみで仕方がない。 Sho Kume 久米翔二郎 NYに本社を置くスポーツ&エンタメの経営/戦略コンサルティングファームTrans Insight のCHO (Chief Hustle Officer)。 1990年愛知県名古屋市生まれ。音楽専門学校MESAR HAUSエレキギター科/東京大学法学部卒、戦略コンサルティングファームP&E Directionsの北米オフィス代表(NY)を経て、現職。 音楽/映画/格闘技/X Sports/スタンドアップコメディ/NY/Hustle をこよなく愛するサイコパス。

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【Forbes寄稿スケボー記事】堀米雄斗をブレイクさせたプロリーグ、SLSの「鬼やべー」創設者

※Forbesへの寄稿記事です。 Forbes記事はこちら ♬Playlist of this Article Sho Kume 久米翔二郎 NYに本社を置くスポーツ&エンタメの経営/戦略コンサルティングファームTrans Insight のCHO (Chief Hustle Officer)1990年愛知県名古屋市生まれ。音楽専門学校MESAR HAUSエレキギター科/東京大学法学部卒、戦略コンサルティングファームP&E Directionsの北米オフィス代表(NY)を経て、現職。音楽/映画/格闘技/X Sports/スタンドアップコメディ/NY/Hustle  をこよなく愛するサイコパス。